ドイツ滞在法: 職員の海外派遣のための就労ビザガイド

ドイツには『滞在法(AufenthG)』という法律が存在し、EUの自由移動原則が適用されない外国人の入国、滞在、就労、ビザ取得、帯同家族の滞在、さらには滞在許可の撤回・却下・国外退去まで、広範かつ詳細に規定されています。例えば、日本人がドイツで就労する場合も、この法律の適用を受けます。
本記事では、非EU加盟国の職員をドイツへ派遣・就労させたい企業様に向け、特に重要なポイントを解説します。

入国から滞在

まず最初に、非EU市民のドイツへの入国から滞在には、滞在の目的に応じた滞在資格が必要です。

入国および短期滞在
入国および短期滞在(180日の間の90日以内の滞在)には、シェンゲンビザが必要です。滞在法上優遇されている国籍の方(例:日本人)は、180日間のうち最大90日間、シェンゲンビザなしで入国・滞在できます。

長期滞在
長期滞在を目的とする場合は、滞在許可(Aufenthaltserlaubnis)または定住許可(Niederlassungserlaubnis)が必要となります。通常、出身国の在外ドイツ公館でナショナルビザを取得し、入国後90日以内に滞在地域の外国人局(Ausländerbehörde)で目的に応じた滞在許可へ切り替えます。ただし、日本を含む優遇国の国籍保有者は入国時のビザ保有は免除され、ビザ無し入国後90日以内に滞在目的に応じた滞在許可を取得すれば事足ります。

2020年3月の滞在法改正以降、滞在許可を有する者は就労が認められると規定されていますが、当局がこれを制限又は禁止することができるとされています(滞在法4a条1項)。この但し書きにより、基本的には「就労目的に応じた滞在許可」 (Aufenthaltserlaubnis zum Zweck der Erwerbstätigkeit)を取得することが必要です。

「就労目的の滞在許可証」の種類

「就労目的に応じた滞在許可」には複数の種類があります。
ここでは、自営業者としての滞在許可と被雇用者としての滞在許可の二つに分け、とりわけ重要なICTカード制度とEUブルーカードの最新情報をご紹介します。

自営業者
自営業を目的とした滞在許可を取得するために必要な一般要件は、経済的メリット、地域的関心の有無、資金調達の確実性とされています。また、それらの審査の際には事業計画の実現可能性、申請者の起業経験、資本投資の規模、雇用創出や人材育成への影響、イノベーションや研究開発への貢献といった要素が考慮されます(滞在法21条1項)。
また、特例として、ドイツ国内の大学または同等の教育機関を卒業した者や、研究者・科学者については他の滞在許可に追加で取得する場合、異なる基準で滞在許可が認められる場合があります(同法同条2a項)。

被雇用者
被雇用者としての就労を目的とした滞在許可の一般的要件は、具体的な雇用契約の提示、ドイツ連邦労働局の承認(Bundesagentur für Arbeit、BfA)、必要な職業資格(外国資格の場合は同等性の存在)、雇用契約に基づく就労が実際に行われることの保証などが必要とされています(滞在法18条)。

ICTカード制度・EUブルーカード
ドイツは指令(EU) 2014/66に対応し、ICTカード制度(Inter-corporate employee transfer、企業内転勤)を滞在法19条以下に実施しました。この制度は、EU域外に所在する企業からのドイツ国内の子会社またはグループ会社に一定期間企業内転勤するための滞在許可取得を容易にします(滞在法19条1項)。
ICTカードは、管理職・高度専門職に就く者、または企業研修生向けの滞在許可です。申請者は、転勤直前の6か月以上、同じ企業または企業グループに所属している必要があり、転勤期間は90日を超えなければなりません。

これらの条件が満たされる者は、労働条件の詳細の提示、転勤終了後、同一の企業または企業グループの拠点に戻ることの保証、これらが確認できる労働契約等の書類を持って、管轄権を有するドイツ在外公館もしくは入国後90日間以内にドイツ国内の外国人局で申請を行うことができます。
ICTカードはEU全体で実施されている制度であるため、一定条件のもとで、ドイツで取得したICTカードを使って他EU加盟国の別支店に勤務することや、逆に他加盟国のICTカードを使ってドイツの支店に勤務することが可能です。
その他、ドイツ国内の資格または同等と認められた外国の職業資格を持つ者やドイツの大学または同等の大学の学位を持つ者は、専門職就労(Fachkräfte)と認められ、ビザ取得が緩和されています。
特に指令(EU)2021/1883の国内法化により、EUブルーカードの取得条件が緩和されました。専門職が不足している分野の労働者や、大学卒業後3年以内の者は、年収要件の引き下げが適用されます。

必要書類と申請プロセス

以上のように、ドイツで就労をするための滞在許可には各就労者が置かれている雇用環境やスキルセットに応じて様々なオプションが存在します。
滞在許可の申請に必要な書類や手続きの詳細は、連邦政府の公式サイト『Make it in Germany- Types of Visa』から確認できます。

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